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コラム「またまた・鳴小小一碗茶」report

2018年7月1日

黄山地域のお茶を飲み比べてみると……

――25年前の感動が、時を超えて蘇った


「黄山毛峰」は、作られている茶区がとても広い。広いから、茶葉の形状は、ほぼ一緒とは思えても、かなり違っているものもある。
 今年来た「黄山毛峰」は、標準的な茶葉。普通にいれて、おいしかった。

 続いて、「雀舌」の「黄山毛峰」。「標準」(原産地呼称のようなもの)で「雀舌」の扱いがどう位置づけられているのか、気にはなるが、ともかくいれて、飲んだ。これも、なかなかおもしろかった。柔らかな鋭さで、香りが良く、その中に春の息吹きもあって、バランスが良いお茶だった。

「黄山銀鈎」が届いた。ほとんど「銀鈎」の名前で通用しているが、今回のものは、産地が狭い地名で特定されてきた。「大谷運銀鈎」である。黄山市歙県大谷運のことである。
 以前は、燻焙が強く、日本人の多くは、少しヘキヘキとするスモーキーなこの緑茶である。このところ、燻焙が次第に浅くなってきている。
産毛が多く、魚を釣る鈎のような曲がった形状である。以前は、鰹節のような、にぶい旨みを醸し出していたが、今はだいぶ飲みやすくなってきた。このお茶もなかなかおいしかった。

「銀鈎」の産する歙県は、黄山市の中心からみると東側になるが、中心部から北に行ったところで産する「太平猴魁」も飲んだ。
 今年の届いた茶葉は、立派で、大きい扁平が、美しかった。
 この地区はスモーキーなお茶が多かった中で、昔からこのお茶だけは、蒼さを少し感じるフレッシュさがある。
 今年も裏切らずに、おいしく味わうことができた。

 黄山市の中心部から西にいった、黄山毛峰の一番西側の茶区には、祈門県がある。
「祈門紅茶」のふるさとだ。25年以上前に行った時、ここでは同じ茶葉から緑茶を作ると「黄山毛峰」に、紅茶を作ると「祈門紅茶」になる、と教科書にあるようなお茶の作りについて聞いた。
「一番よい祈門紅茶は、毎年、ドイツに行く」という説明には、当時経済成長が著しく、欧州経済の牽引車としてのドイツの姿があった。
 ここでも、お茶の歴史の真実、「お茶はお金の集まるところに集まる」と、妙に納得できた。

 今年来た「祈門紅茶」は、ゴールデンチップも多く、自然な甘さと、中国紅茶独特の軽いスモーキーな香りがして、おいしかった。

 なんといっても、今年のこの地域からのお茶で、感動したものは、黄山の「野生茶」であった。
 整っては揉捻されているわけではない。ただ、自然なお茶の黒みかがった緑と、その元気さがにじみ出ている茶葉が、おいしさを確信させていた。
 生産された場所も、わかって送られてきた。「黄山市徽州区富溪」。コメントもついてきた。「富溪」は、黄山毛峰の発祥地である、と。

 発祥地であるかどうかは、調べてみないとわからないが、久しく見ることがなかったような、躍動感をもった美しい茶葉である。
「富溪」の場所を調べてみた。
 黄山市の中心から北に、黄山に向かう道の途中にある。
 最初に黄山に行った時、まだ高速もなく、たしかこの道を通って、黄山に向かった記憶がある。

 途中からは、舗装もなかったような道を、長い時間、バネのよくないバスに揺られていった。
 なかなか黄山の山麓には着かなかった。途中、トイレ休憩を、木造の小さな小屋のようなところでとった。
 中には、休憩する人に売るためのものが、いろいろあった。
 その売り物の中には、かなり高価なものも売られていた。宜興の茶壺が、鑑定書つきで並んでいた。本物の作家ものかもしれないが、その場にはありえないような、高い値段であった。

 奥の暗いところに、「野生茶」と手書きで書かれて、茶葉が大きなガラスケースに入っていた。
 当時は、まだまだ茶葉をたくさん見ているわけではなかったが、一目で、元気そうな茶葉に見えた。迷わずに、少し買った。

 帰国して飲んでみて、もっとたくさん買えばよかった、と思った。
「屯溪」。その当時、この名前が、黄山の地域の中心地であり、空港の名前もこの名前であった。そこに数泊していて、本当にきつかった。この地のお茶が、馴染めるものではなかった。中国でも有数に油がきつい、といわれる徽州料理に出てくるお茶は、どれもスモーキーな緑茶で、我々の好みからは、一番遠いところにあるように感じた。
 ここを集積地として加工されたお茶は「屯緑」と呼ばれ、輸出で人気だという話しも聞いた。

 そんな地域のスモーキーなお茶は、粉を吹いたように白味かかるのと違っているものがおおかった。その野生茶は、緑濃く、なんとなくおいしそうに見えたのが、思い出される。

 今回の野生茶を飲んでみて、その時のことを思い出した。
 当時のものとは、ちょっと違うような気がするが、黒ずんだ緑の茶葉で、勢いがあり、軽く揉捻されて、ところどころに、産毛が小さく白く固まってみえる。
 飲んでみると、上品で、清らかな中に、春を感じさせる力がある。柔らかな力だ。

 このようなお茶は、たぶん「標準」の対象外のお茶である。
 これからどんどん、「標準」のお茶に向かった淘汰が進んでいくだろう。こういうお茶はどうなっていくのか。おいしいだけではどうしようもないのか。消えていくことの不安を感じる。
 このお茶は、私が飲む今シーズンのお茶の中で、上位3つの一つには、必ず入るお茶になる。

かつお節ボテトチップスの写真 今回の「いっぴん」は、「ポテトチップス」である。
 お土産にいただいて、食べて、思わずお取り寄せ。25袋、ダンボール一つを買ってしまった。
 もちろん、みなさんとご一緒に食べていただくため。
「かつお節ポテトチップス わさび味」。「静岡発」と肩につけられている。
 老舗「鰹節屋」(焼津・堅魚屋)と「わさび屋」(たまるや)がコラボ、とも書かれている。
「刺激が変化する2WAY方式」と表示されている。「@まずは、そのまま「わさび」の辛みを味わうべし」。「A半分食べたら、別添の「かつお節」を入れてシェイクすべし。辛みがマイルドになります。」
 と、やたら講釈や指示が多い。
 この手のものは、たいていは「ハズレ」であるが、ご指示どおり、あまり期待もせず食べてみた。
 と、思わず、量が少ないのでは、と思うほど、あっと言う間に一袋を食べてしまった。ダイエットをしなければならないのは、承知のうえである。
 ということで、ネットでも買える。ちなみに販売は、「新丸正」(焼津市)。お店の直接のネット販売はないようだが、ネット検索すると、すぐに見つかる。「わさび味」ではないものもあるので、間違えないように。

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